本研究は、リタイア世代の就業の有無がメディアの効用認識とどのように関連しているのか、メディアはリタイアに対する補完機能を有しているのかについて検討したものである。東京近郊居住の58~69歳の男女2600名に対する質問票調査を実施したところ、就業の有無よりも、年齢や性別のほうが各メディアへの効用認識に強い影響を及ぼしていることが見出された。リタイア前後の回答者を擬似パネルとして比較しても、リタイアによる効用認識の増大は確認できず、メディアが社会活動の代替機能を有しているという通説への異議を提起する結果となった。