書評:市川裕著『ユダヤ人とユダヤ教』(岩波新書、2019)
ユダヤ教は「宗教」ではない。人びとの精神と生活、そして人生を根本から支える、神の教えに従った生き方だ。啓典の民、離散の民、交易の民、書物の民、さまざまな呼び名をもつユダヤの人びと。苦難の歩みのなかで深遠な精神文化を育む一方、世を渡る現実的な悟性を磨いてきた歴史をたどりながら、その信仰、学問、社会を知る本である。書評では、本著が概説書でありながらも、ユダヤ研究を専門とする者にも有益な気づきがある点を紹介した。