日本人が実務の現場で、英語がうまく使いいこなせない数ある理由の一つに、中学校、高等学校で学習した英文法(学校英文法)が、単なる体系的知識の習得のみに注がれ、working knowledgeのレベルにまで達していないことが挙げられる。つまり「誰に」「どのように」といった対話をしている当事者間の人間関係を考慮に入れた「使い分け」や、またなぜその文法形式が選択されるのかという背後にある原理、さらには話者の意図や心理まではきちんと教授されてこなかった。ここに原因の一端があるのではないかと筆者は考えている。そこで本稿では、英語を外国語として学習する日本語を母語とする個人(少なくとも中学校までの英語学習内容を一通り理解している)を想定し、意味論や語用論、社会言語学の観点から、対人コミュニケーションにおいて丁寧度に応じた言葉の使い分けを、学校英文法の枠組みからその背後にある原理や原則を垣間見ながら、効果的な指導アプローチの提示を試みた。