「体験が残らない・片付けられない・人とうまくいかない」という訴えと独特の感覚特性を特徴とする成人女性の心理療法を提示し,①イメージ表現の特徴と変容の面接経過との関連.②クライエントの主体性に働きかけ,個としての確立を促す心理療法におけるイメージ表現の意義を考察した.主体としての自己感の弱さにより,記憶や体験が自己との関係で繋ぎ止められず,時間軸や思いの軸のもとにネットワーク的に感情が立ち現れることが難しかった女性が,会話中心で適宜箱庭や夢・描画等イメージを媒介とする心理療法によって,セラピストとつながり,感情体験や過去の自分と新たな繋がりを形成した.身体との関連,乖離との関連,などさまざまな議論が展開され,イメージ表現の新たな可能性を提起した.フロアからも大きな反響が寄せられた.抄録集p.73.