本稿は、平成28年1月に大正記念館で開催された「からだを育てる 感覚を磨く」のシンポジウムにおいて行った報告の記録である。生田久美子氏(田園調布学園大学)との共同報告であり、イタリアのボローニャ市にあるアンテロス美術館の「触る絵」を通した教育実践の意義について報告した。「見る」ことは網膜に映る二次元の映像だけではなく、そこに込められている「動き」や「意味」さえも読み取っていくことであり、「触(さわ)る」というのは、「手」という異なる種類のアンテナから「認識の対象物」に埋め込まれた「動き」や「意味」を受信していくことであると指摘した。その上で、「知」とは、単に言語で受けたものを言語で解釈し直すという狭い意味に限定されるのではなく、自分の周りにある環境世界をいろいろなアンテナを通して受信し、そこに埋め込まれた「動き」や「意味」を読み取った上で、さらにそれを自分自身が作り出していくことまで含まれることを示した。