本研究では、大学教育のにおける音楽のカリキュラムの在り方や大学と音楽家との協働の可能性を探るべく教養科目「芸術学」内で受講生と作曲家の共同による「初演プロジェクト」を実施し、受講生と作曲家への聞き取り調査と実践の内容を分析、検討を通して、プロジェクトの成果と課題を明らかにした。学生の変容として特定の目標を達成するための変化というよりも、ジャンルを超えた関心の拡がりや他者の文化的バックグラウンドへの興味など、自分が変わっていくことを目的とした問題提起を含む実践となった点では一定の成果があった。そうした変容の契機となったのが作曲家との出会いであり、筆者と作曲家との協働でこのプロジェクトを企画実施したことで大学と音楽家の連携による教育的な可能性が示唆された。